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【わかりやすく解説】公示送達とは?必要なケースと手続き方法
「相手に裁判の書類を送りたいけれど、住所が分からない…」訴訟手続きを進める上で、相手方に必要な書類を届けられないという状況は、決して珍しいものではありません。このような場合に、法律で認められている特別な送達方法が「公示送達」です。本記事では、公示送達とは一体どのような制度なのか、どのようなケースで必要になるのか、そしてその具体的な手続き方法について、法律の専門知識がない方にも分かりやすく解説します。公示送達の期間や費用、注意点についても詳しく触れ、スムーズな裁判手続きの進行をサポートします。もし、書類が相手に届かずお困りの場合は、ぜひ本記事を参考に、公示送達の利用を検討してみてください。
なぜ必要?公示送達が求められるケース
裁判手続きにおいて、原告が訴状を提出したり、裁判所が期日を通知したりする際には、その書類を被告(相手方)に送達する必要があります。この送達が原則通りに行われない場合、手続きを進めることができません。しかし、被告の住所が不明であったり、海外に居住していて通常の送達方法では困難であったりするケースが生じます。このような場合に、訴訟手続きを滞らせることなく進めるために、例外的な送達方法として「公示送達」が認められています。
相手の住所が不明な場合
被告の住民票上の住所に実際に住んでいない、転居したが転居先が分からないなど、原告が被告の現在の住所を把握できない場合があります。また、被告が意図的に住民票を異動させていないケースや、失踪して所在が不明になっているケースも考えられます。このような状況では、通常の郵便や執行官による送達を試みても、書類を被告に届けることは困難です。公示送達は、このような「相手の住所が分からない」という状況を打開するための手段となります。
相手が海外に居住しており、通常の送達が困難な場合
被告が日本国外に居住している場合、その国によっては日本の裁判所の書類の送達方法が異なったり、手続きに時間を要したりすることがあります。ハーグ条約のような国際的な条約に基づいて送達を行う場合でも、煩雑な手続きが必要となることがあります。公示送達は、このような「海外への送達が困難」なケースにおいても、一定の要件を満たせば利用することが可能です。ただし、海外への公示送達の場合、国内の公示送達とは期間の計算などが異なる点に注意が必要です。
その他、通常の送達方法では送達ができない正当な理由がある場合
上記以外にも、被告が正当な理由なく送達を拒否している場合など、通常の送達方法では送達を行うことが著しく困難であると認められるケースで、公示送達が利用されることがあります。例えば、被告が郵便物の受け取りを拒否し続けるような場合などが該当します。ただし、この場合、裁判所は通常の送達を試みた経緯や、送達が不可能であると判断した具体的な理由を慎重に審査します。
どうすればできる?公示送達の手続きの流れ
公示送達を行うためには、法律で定められた手続きに従う必要があります。ここでは、その一般的な流れをステップごとに解説します。
申立ての準備:申立書の作成、必要な書類
まず、公示送達を希望する当事者(通常は原告)は、裁判所に対して公示送達の申立てを行う必要があります。この申立てには、所定の事項を記載した「公示送達申立書」を作成し、裁判所に提出します。申立書には、なぜ通常の送達が不可能であるのかという理由を具体的に記載し、その理由を裏付ける資料を添付する必要があります。
申立書に記載する主な事項
- 当事者(申立人および相手方)の氏名または名称、住所
- 送達すべき書類の種類
- 通常の送達が不可能である理由(具体的な状況を詳細に記述)
- 公示送達の方法(裁判所の掲示板への掲示、官報への掲載など)
- 申立ての年月日
添付が必要となる主な書類
- 相手方の住民票(除票を含む)または戸籍附票
- 相手方の不在を証明する資料(不在通知書の写し、調査報告書など)
- 海外在住の場合は、その旨を証明する資料
- その他、裁判所が個別に指示する書類
裁判所への申立て:申立書の提出先、費用
作成した公示送達申立書と必要な添付書類を、訴訟が係属している裁判所(通常は地方裁判所または簡易裁判所)に提出します。この際、所定の申立手数料(収入印紙)と、公示送達にかかる費用(予納郵券、官報掲載料など)を納める必要があります。費用は、裁判所や公示の方法、書類の量などによって異なります。
裁判所の審査:申立てが適法であるかの審査
裁判所は、提出された申立書と添付書類に基づいて、公示送達の申立てが適法であるかどうか、そして公示送達を行う必要性があるかどうかを慎重に審査します。単に相手の住所が分からないというだけでなく、相当な方法で相手の所在を調査したにもかかわらず不明であったことなどが求められます。裁判所が必要と判断した場合には、申立人に資料の提出や説明を求めることがあります。
公示の実施:裁判所の掲示板への掲示、官報への掲載
裁判所が公示送達を認める決定をした場合、その旨が裁判所の掲示板に一定期間(通常2週間)掲示されます。また、送達すべき書類の内容によっては、官報に掲載されることもあります。この掲示または掲載をもって、法律上、相手方に書類が送達されたものとみなされます。掲示期間や掲載の方法は、民事訴訟法などの法律や裁判所の規則によって詳細に定められています。
送達の効果発生:一定期間経過後の送達効力発生
裁判所の掲示が開始された日から一定期間(原則として掲示を開始した日から2週間を経過した日)、または官報に掲載された日から一定期間を経過すると、相手方に書類が送達されたものとみなされ、その効力が発生します。海外にいる相手方に対する公示送達の場合は、この期間がさらに長くなることがあります。送達の効力が発生すると、相手方が実際に書類を受け取っていなくても、裁判手続きは進行することになります。
知っておきたい!公示送達の期間と費用
公示送達は、通常の送達方法と比較して、時間と費用がかかる場合があります。ここでは、その期間と費用の目安について解説します。
公示送達にかかる期間の目安
公示送達の申立てから実際に送達の効力が発生するまでには、一定の期間を要します。
- 申立て準備期間: 申立書の作成や必要書類の収集にかかる期間は、個々のケースによって大きく異なります。
- 裁判所の審査期間: 裁判所が申立てを受理し、審査を行う期間も、裁判所の混雑状況などによって変動します。通常、数日から数週間程度かかることがあります。
- 公示期間: 裁判所の掲示板への掲示期間は、民事訴訟法第112条により、原則として掲示を開始した日から2週間を経過する日までと定められています。海外にいる相手方に対する公示送達の場合は、この期間が6週間となる場合があります(民事訴訟法第113条)。
したがって、公示送達の申立てから送達の効力が発生するまでには、最短でも2週間以上の期間を要することになります。海外の相手方に対する場合は、さらに長い期間が必要となることを理解しておく必要があります。
公示送達に必要な費用の内訳
公示送達には、通常の訴訟費用に加えて、特別な費用がかかる場合があります。
- 申立手数料(収入印紙代): 公示送達の申立てには、所定の収入印紙を申立書に貼付する必要があります。手数料の額は、裁判所や事件の種類によって異なります。
- 予納郵券: 裁判所から相手方に対して公示送達の通知などを送付するために、予納郵券が必要となる場合があります。
- 官報掲載料: 送達すべき書類の内容や裁判所の判断によっては、その内容が官報に掲載されることがあります。この場合、官報への掲載料が発生します。掲載料は、掲載する文字数などによって変動します。
これらの費用は、申立人が原則として負担することになります。具体的な金額については、申立てを行う裁判所に確認する必要があります。
通常の送達と比較して、期間や費用がどう異なるか
通常の送達(郵便や執行官による送達)は、相手方が住所にいる限り、比較的短期間かつ低費用で完了することが一般的です。しかし、相手方の住所が不明な場合や海外にいる場合は、送達自体が不可能であったり、非常に時間と手間がかかったりします。
公示送達は、相手方が実際に書類を受け取らなくても、一定期間の経過によって送達の効力を発生させるという点で、通常の送達とは大きく異なります。期間については、公示期間があるため、通常の送達がスムーズに行われた場合よりも長くなる可能性があります。費用についても、官報掲載が必要な場合は、通常の郵送費用よりも高額になることがあります。
注意点:公示送達を行う前に確認すべきこと
公示送達は、相手方に確実に書類が届くことを保証するものではありません。そのため、その利用にあたってはいくつかの注意点があります。
相手に内容が伝わらないリスク
公示送達は、裁判所の掲示板への掲示や官報への掲載によって送達があったものとみなす制度です。相手方が裁判所の掲示板を日常的に確認したり、官報を購読したりしているとは限りません。したがって、公示送達を行っても、相手方が訴訟の提起や期日について全く知らされないまま手続きが進んでしまう可能性があります。
送達効力発生後の手続き進行
公示送達によって送達の効力が発生すると、相手方が訴訟の内容を知らないまま、裁判手続きは進行していきます。相手方が期日に出頭しない場合、原告の主張がそのまま認められる判決(欠席判決)が下される可能性もあります。後日、相手方が判決の内容を知り、不服を申し立てたとしても、手続きが覆ることは容易ではありません。
慎重な判断の必要性
公示送達は、相手方に書類を届けられない場合の最終的な手段として用いられるべきです。可能な限り、相手方の住所を調査する努力を尽くし、他の送達方法(例えば、付郵便送達など)も検討した上で、公示送達を選択する必要があります。安易な公示送達の申立ては、相手方の権利を侵害するおそれがあるため、裁判所もその必要性を厳格に審査します。
公示送達でお困りの際は、クローバー総合調査にご相談ください
公示送達は、相手方に裁判書類を届けられない場合の最終的な、そして強力な手段となり得ます。しかし、その手続きは複雑であり、相手方に確実に情報が伝わるとは限らないという重要な注意点も存在します。特に、相手方の住所が不明確なまま公示送達の手続きを進めてしまうと、相手方が訴訟の存在を知らない間に手続きが進行し、予期せぬ結果を招く可能性も否定できません。
このようなリスクを回避し、より確実に相手方へ情報を届け、正当な手続きを進めるためには、公示送達を行う前の徹底的な住所調査が不可欠です。
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